MONSTER(怪物)という存在の影


前にも取り上げたけど、浦沢直樹/著「MONSTER」という漫画
(現在アニメ化放映中:こちらも世界観を裏切らないのでお勧め)がある。
Monster (18) (ビッグコミックス)
物語は大変複雑なので、解説は略す。
”ヨハン”の母がラスト間際に漏らす「本当の怪物は・・・・誰・・・」
これが今日のテーマかもしれない。


この世界の中の細かい所を見ていくと、中には「人間の仕業とは到底考えられない(考えたくない)」仕業をしていた・している人々や組織がある。
歴史に名を残した人物から言えば、筆頭がアドルフ・ヒトラーか。
ポル・ポト政権の大虐殺、スターリンの血の粛清。
旧日本軍・関東軍731部隊と呼ばれた非道な人体実験の数々を行った組織(似た研究をその後も行っていた海外の機関があるという話も聞く)。
近年では地下鉄へのサリン散布をも指示したオウム真理教の教祖・松本智津夫、中国の天安門事件で突入を指示した人物、WTC911同時テロの指示者(オサマ・ビン・ラディンと言われている)、きっと記憶を辿って挙げていけば多くの人物が浮かび上がってくる。
また、日々の川のように激しい情報の流れの中を覗くだけでも、愕然とする仕業をやってのけていた「悪事」をやっていた者達のボロが発覚していく。
最近では過去2年間に「数え切れない程」の女性を集団で輪姦強盗していた奴らがいたと聞く。
アメリカの例として、計画的レイプ殺人を繰り返していた殺人鬼の記録などもディスカバリーチャンネルでいくつも放映されている(だから「プロファイリング」という知見の集大成の部署が発足したと聞く)。


かたや、日常ではどうか?
自殺者の中の1万人が不景気による失業・リストラの影響で増加したと言われているのに現実的な予防救済処置を執ろうとしない行政。賃金格差の広がりによる貧困の拡大。福祉の切り捨てと融通のなさ(昔は生活保護でエアコン設置が認められなかった為に都内の夏の猛暑に耐えられなくて一人の老人が亡くなられたという、一部では有名な話もある)、シャウプ税制の廃止と「与党選挙時の公約違反の強行採決」で成立した消費税の導入による更なる貧富の格差の出現。
バブル全盛の時期には社員を接待ゴルフでこき使い、不景気になるとその功績の社員らをリストラしてコストダウン対策でパートや不慣れな派遣を採用し、社員にはサービス残業を強要して夜にはバレないようにロウソクまで使わせたという異常な事までする企業が出てきた日本の企業体質。


アメリカに至っては、医療制度の仕組みで貧困者ほど質の良い医療が受けられないと聞く。精神医療もまたしかり。
DSM-III[1980年。レーガン就任(レーガノミックス)と一致するのは偶然か?]以降の診断基準の出現は、これにマッチした効率的なものだという。診断の効率化?・・・・
その波が遂に日本でも表面化したのが1990年代後半かららしい。一部では「DSM-IV[1994年]が精神医学を駄目にした」という話まで風の噂で聞こえてくる。
今の政府には、経済政策までアメリカ追従的な臭いがする・・・
夜警国家」「小さな政府」は民主主義の「自由」の名の下に「資本主義」が推し進める国家の体制教義だという理解もできる。今の小泉政権がやろうとしているのは、なにか?
今回の「国鉄」が分割された後のJR西日本の「体質」が新型ATS可動前に皮肉にも引き起こしてしまったあの大惨事の根本背景は?


実は、既に世界が「”ある”怪物という目に見えない存在の影」に覆われているのではないだろうか・・・
「”ある”」については、もう語るまでもないと思う。少なくとも「人間的(ヒューマニズム)」の対局にある存在、としておく。